ボイラーの自動制御

LESSON 22からはボイラーの自動制御について学習します。

LESSON22 ボイラー自動制御の基礎


LESSON22ではボイラー自動制御の基礎を学習します。
堅苦しい言葉を使っていますが、簡単に言うとボイラーの運転を常に一定に、安全に保つようにするために、自動化することです。

●ボイラー自動制御の目的
ボイラーは蒸気、温水の使用量により、圧力・温度、水量が変化します。その変化に応じて燃料の供給量を調節し、圧力や温度を一定に保つようにしなければなりません。また、給水量も調節してドラムの水位を一定に保つようにします。ボイラーに必要な燃料や給水を調節することは、発生した温水、蒸気によって、失われたエネルギーに値するエネルギーを補給することで、ボイラーの運転をつねに平衡状態に保つようにすることです。ボイラーをいつも安定した状態で効率よく運転するためには、空気と燃料の比率を適正に保ち、蒸気温度や圧力も一定に保つように、自動化が必要です。ボイラーの自動制御は省力化だけではなく、効率良く運転できることによって、燃料費の節減にもつながります。一般的にボイラーの自動化は起動から停止までの運転行程がおこなわれる場合が多いです。

●ボイラーの制御量、操作量
ボイラーの運転にはつねにエネルギーの出入りがあります。入ってくるエネルギーとしては燃料、給水、燃焼用空気により持ち込まれるもの、出ていくエネルギーとしては蒸気、温水、排出燃焼ガスによって持ち去られるもの、一般熱損失(壁からの放散熱、吹出し、不完全燃焼)があります。ボイラーの運転中は、出力エネルギーが変化するときに現れる蒸気圧力、ドラム水位などの変化を検出して、これらの値が許容範囲内におさまるように、燃料量、給水量などを調節しています。ボイラーの運転で、ある範囲内に抑えなければならない量を制御量、その制御のために調節する量を操作量といいます。





○自動燃料制御(ACC)、自動ボイラー制御(ABC)
自動燃料制御(ACC)とは、燃料量と燃焼空気量を操作して蒸気圧力を制御すること。低圧ボイラーなどは蒸気圧力、水位、炉内圧力などにはそれぞれ独立した制御回路を設けて、操作している場合が多いです。高圧大容量ボイラーは蒸発量に比べ、ボイラー内保有水量が少ないので、燃焼制御と給水制御を同時に行う必要があります。このためにそれぞれの制御回路を結合し、ボイラー全体の安定した運転を行えるように、まとめた制御回路が設けられます。これが自動ボイラー制御(ABC)です。

ボイラーの自動制御には、フィードバック制御が使用されます。
次はフィードバック制御について学習します。

LESSON23 フィードバック制御について


レッスン23はボイラーの自動制御のフィードバック制御について学習します。

●フィードバック制御について
フィードバックとは英語でFeedbackと書きます。意味は結果をみて行動を調整することです。この意味からわかるように、ボイラーでは操作した結果得られた制御量の値を目標値と比較して、それらを一致させるようにさらに訂正動作を繰り返す制御のことです。例えばボイラーの水位制御では、検出されたドラムの水位の実際の数値と水位の目標値が比較され、その差を基本に訂正の信号が送られます。そして給水ポンプ、または給水弁が操作され、水位が調整されます。自動化されていないボイラーの水位の制御の場合はどうでしょうか。ドラムの水位は直接見ることができませんので、水面計でドラムの水位を確認し、目標の水位との差を見て、弁をどの程度開閉したら良いかを判断し、手動で弁を開閉します。給水量が変化してきますので、それをまた確認しながら、操作を繰り返します。計測→判断→操作の繰返しが行われます。フィードバック制御では計測で得られた制御量の値を目標の値と比較し、その差に対応する操作信号を作る調節器の制御動作を分類しますと、オンオフ動作、比例動作(P動作)、積分動作(I動作)、微分動作(D動作)となります。蒸気圧力、温水温度、水位などには、これらの動作を基本に主に5つの制御方式が採用されています。

○オンオフ動作による制御
○比例動作による制御(P動作)
○比例+オンオフ動作による制御○比例+積分動作による制御(PI動作)
○比例+積分+微分動作による制御(PID動作)また、信号の伝達方式によって制御方式を分類しますと、空気式、油圧式、電気式、電子式などがありますが、これらを組み合わせて行われる場合が一般的です。

●オン・オフ動作による制御(2位置動作)
小容量のボイラーに多く採用されています。圧力、水位、温度などの制御に用いられる一般的な方式です。設定値に対して、高いか低いかで制御するもので、設定値に幅をもたせ、上限でオフにし、下限でオンにします。そしてこの動作に至る幅を動作すき間(入り切り差)といいます。



●ハイ・ロー・オフ動作による制御(3位置動作)
設定圧力を2段階に分ける制御で、蒸気圧力が設定圧力より一定圧力以下になっているときは高燃焼状態となり、燃焼量は100%になります。蒸気圧力が設定圧力よりもやや低い圧力まで上昇すると、低い燃焼に切り替わって、燃焼量が約30~50%に低下します。さらに圧力が上昇して、設定圧力になりますと、燃焼を停止するためのリミットスイッチが作動します。



●多位置動作による制御
操作量(燃焼量)が3つを超える値のいずれかをとる動作を利用した制御です。

●比例動作(P動作)による制御
偏差の大きさに比例して操作量を増やしたり、減らしたりするように動作するものです。P動作ともいいます。上の図は比例動作による蒸気圧力制御を示しています。圧力制御の目標設定値をP2としたとき、圧力に比例して操作量を増やしたり、減らしたりすることで、蒸気圧力が下限(P1)、上限(P3)の範囲の中で燃焼量を比例制御します。この場合、P3~P1を比例帯といいます。



●積分動作(I動作)による制御
制御偏差量に比例した速度で操作量を増やしたり、減らしたりするように動作するもので、I動作といいます。比例動作(P動作)だけで制御している場合は、負荷の変動、装置の固有特性などにより、設定値と現在の値の偏差がずっと続いてしまうことがあります。このことをオフセットといいます。積分動作(I動作)はオフセットが現れたとき、なくなるように働く動作です。比例動作(P動作)と組み合わせてPI動作として使用されます。

●微分動作(D動作)による制御
偏差が変化する速度に比例して操作量を増やしたり、減らしたりするように働く動作です。D動作ともいいます。負荷の急な変動(外乱)などにより、現在の値が変化し始めますと、その変化の速度に応じて偏差の少ないうちに修正の動作を加えて、制御結果が大きく変動するのを防ぐことができるため、P動作やPI動作と組み合わせて使用されます。

普段見なれない言葉が続きますが、もう少しがんばってください。

LESSON24 シーケンス制御について


レッスン24ではボイラー自動制御のシーケンス制御について学習します。

●シーケンス制御とは
シーケンス制御(Sequential Control) とは「あらかじめ定められた順序または手続きに従って制御の各段階を逐次進めていく制御」である。日本工業規格(JIS)の旧規格 C0401 に定義されています。機械に行わせる動作を順序正しく覚えさせておくことにより、始動ボタンを押すだけで、後は全部制御装置が仕事を行う場合などに用いられます。シーケンス制御は、全自動洗濯機・エアコンといった私達の身の周りにある家庭用電気器具をはじめ、信号機・自動販売機・工場の産業ロボットや自動化設備・ビルのエレベーターや自動ドア・発電所や変電所に至るまで、さまざまな装置や設備に使われています。単なるスタート/ストップに限る単純なものから複雑な信号処理を必要とする大規模なものまで存在しており、あらゆる分野で活用され、自動化・省力化に大きく貢献しています。(Wikipediaより)このようにボイラー関係の専門用語ではなく、あらゆる場面で活躍しているものです。

●インタロック
ボイラーの場合、制御結果に応じて現在進んでいる制御動作を継続するか、次の段階へ移行させるかの信号を送りだす要素を組み合わせて動作を行わせることをインタロックといいます。簡単にいいますと、定められた条件を満たさなければ、制御動作が次に進めなくなるようにしたものです。また、定められた条件を満たさなければ、その段階での制御を中止させる要素を組み合わせることも含めてインタロックといいます。ボイラー運転中の異常なときや誤操作などによる事故を未然に防ぐ役割があります。インタロックが作動した後は、故障などを修復したあと、手動でリセットしなければ、次の段階に進めないようになっています。



上の図は小容量のボイラーのシーケンス制御のフローチャートの例を示したものです。
起動ボタンを押す→ファン、バーナモータ回転→プレパージ→制御の各段階正常→自動燃焼制御による定常運転というように進行します。異常があった場合は行程の途中で進行が停止し、警報などで知らせるようになっています。

※プレパージとは事前に換気すること。後で出てきますので、ポストパージも覚えておきましょう。意味は事後換気です。

LESSON25 さまざまな制御


ボイラーの自動制御には他に、さまざまな制御があります。レッスン25ではその各部の制御、圧力制御、温度制御、燃焼制御、水位制御について学習します。

●圧力制御
ボイラーの圧力制御には、蒸気圧力制御、炉内圧力制御、重油圧力制御などがあります。そしてこれらの制御に利用される装置には、オンオフ式蒸気圧力調節器、比例式蒸気圧力調節器、圧力制限器などがあります。

○オンオフ式蒸気圧力調節器(電気式)
一般的に小容量のボイラーに使用されています。設定した蒸気圧力をベローズで検出し、バーナ燃焼を圧力の上限でオフに、下限でオンにすることで、蒸気圧力を制御する装置です。

※ベローズとは外部と内部の圧力差・温度差などで伸縮する蛇腹式(じゃばらしき)の装置の一部分です。

○比例式蒸気圧力調節器
中・小容量ボイラーに多く利用されています。蒸気圧力の設定に応じて燃焼量を増減させる装置です。

○圧力制限器
ボイラーの蒸気圧力、燃焼用空気圧力、油だきボイラーの油圧力、ガスだきボイラーのガス圧力などが異常に上昇、低下したとき、すぐに燃料の供給を停止し、安全を確保します。

○その他の圧力調節器
大容量ボイラーの圧力調節器には電子式、電気・空気式、油圧式などがあります。


●温度制御
ボイラーの温度制御には、温水ボイラーの温水温度、重油の過熱温度、過熱器の蒸気温度、空気予熱器の温度などがあります。
温水ボイラーの温度制御は一般的にオンオフ制御、比例プラスオンオフ制御によって行われており、電気式と電子式の調節器が使用されています。


●燃焼制御
蒸気圧力調節器、温水温度調節器からの信号で燃料量が調節され、それにともなって燃料用空気量を加減して空気・燃料比(空気比)を最適に保つ制御を燃料制御といい、これを行う装置を燃料制御装置といいます。大容量ボイラーには、空気流量調節器、コンピューターを使用したものが一般的です。

中・小容量ボイラーは一般的に、ダンパ開度調節器、空気・燃料比制御機構、コントロールモータ、燃料調節弁などの装置が使用されます。

○ダンパ開度調節器
駆動に油圧、電気などを利用し、オンオフ動作、ハイ・ロー・オフ動作、多位置動作を利用した制御に使用されます。

※ダンパとは英語でDamperと書き、炉・ストーブなどの通風調節弁[装置]、ピアノなどの止音器のことをいいます。

○空気・燃料比制御機構
比例動作を利用した制御には、一般的にリンク装置を使った空気・燃料比制御が使用されます。コントロールモータの動きを、流量特性の違う燃料調整弁と空気ダンパに伝え、どのような部分負荷においても、燃料量と空気量の比率を適切に保ち、燃焼が良い状態に維持できるように調節します。調節が悪いと燃焼不良となり、異常消火、バーナタイルの損傷、カーボんンの付着などの原因となります。

○コントロールモータ
燃料調節弁、燃焼用空気ダンパ、などの開度を連続して調整する操作装置です。普段は操作モータともいわれています。構造はどちらの方向にも回転できるコイルを2つ備えた小型電動機に、減速機構を組み合わせたものです。バランシングリレー、リミットスィッチ、すべり抵抗器(フィードバックポテンショメータ)を備えており、調節器からの信号の変化に応じた回転角度(90°、160°のものがある)が得られるようになっています。

○燃料調節弁
ボイラーに供給する燃料の量を調節する弁。コントロールモータの回転軸と連動しています。ボイラーの種類、メーカーによって、小・中容量ボイラーに使用される弁の開度・流量特性は、普通は直線的に変化します。


●水位制御
蒸気ボイラーでは負荷変動に応じて給水量の調節が行われます。ドラム水位を制御する方式には、3つの方式があります。



○単要素式水位制御
ボイラー内の水位を検出し、給水ポンプを起動・停止するか、ポンプはつねに運転し、水位の変化により給水量を増減するものがあります。

○2要素式水位制御
水位の検出と蒸気流量を検出し、両方の信号を操作部へ伝え、給水量を調節します。

○3要素式水位制御
水位、蒸気流量、給水流量を検出し、それぞれの信号をあわせて、操作部へ伝えて給水量を調節します。

水位検出器には、フロート式、電極式、熱膨張管式の3種類があります。

○フロート式(浮子式)水位検出器
フロートチャンバ(浮子室)があり、その中をフロート(浮子)がボイラーの水位によって上下し、これに連動して給水ポンプの起動、停止が行われます。中小容量ボイラーに多く利用されており、構造が簡単で堅固、取扱いが容易などの特長があります。

○電極式水位検出器
電極を検出筒(水柱管)に入れ、電極に流れる電流の有無によって水位を検出し、給水ポンプの起動、停止が行われます。構造が簡単で、電極数を増やすことによって、給水制御、低水位遮断などの任意の信号が得られる特長があります。しかし蒸気の凝縮により検出筒内の水の純度が高くなると、水の伝導性が低下し、検出器が正常に働かなくなる欠点があります。欠点を解消するために、ボイラーのドラムに直接電極棒を取り付ける形式のものも利用されています。

○熱膨張管式水位調節装置
線膨張係数の大きな材料で作られた金属製膨張管が取り付けられ、その金属管の温度の変化による伸縮を利用して給水調節弁の開き具合を調節します。この装置は電力などの補助動力を必要としませんので、自力式制御装置といいます。

LESSON26 燃焼安全装置、点火装置


レッスン26では燃焼安全装置、点火装置について学習します。

●燃焼安全装置
ボイラーには燃焼による事故を防ぐための燃焼安全装置が取り付けられています。

燃焼安全装置に求められる必要な7つの条件

○燃焼装置は燃焼が停止したあとに、燃料が燃焼室内に流れ込まないような構造であること。燃料もれの点検、保守がしやすい構造であること。

○点火の前、ファンによるボイラー内の燃焼ガス側空間(煙道を含みます)を十分な空気量でプレパージする構造であること。

○ファンが異常停止したとき、主バーナへの燃料の供給をすぐに遮断する機能があること。

○燃焼装置は主安全制御器、火炎検出器、燃料遮断弁などで構成される信頼性の高い燃焼安全装置が設けられていること。

○主安全制御器は火炎検出器などから信号を受け、確実に燃料制御のための指令を発するものであること。

○異常消火時などの場合、燃焼安全装置はバーナへの燃料の供給をすぐに遮断し、手動による操作でなければ再起動できない機能をもっているものであること。

○軽質燃料油(灯油など)、ガス燃料を使用するボイラーは、燃料を遮断する機構が二重に設けられていること。

燃焼安全装置の基本構成

主安全装置、火炎検出器、燃料遮断弁、各種の事故を防止するためのインタロックを目的とする制限器から構成されています。



●主安全制御器
出力リレー、フレームリレー、安全スイッチ、シーケンスタイマ、増幅回路で構成されています。

○出力リレー(負荷リレー)
起動(停止)スイッチを押すか、圧力、温度などの調節器からバーナ起動(停止)の信号がでると、出力リレーが作動して、バーナモータ、点火用燃料弁、点火用変圧器などに信号が送られ、バーナを起動(停止)します。
○フレームリレー
増幅部(電子回路)を経由した火炎検出信号によって作動するリレー(中継)です。火炎のあるなしをこのリレーの作動・復帰に変換します。
○安全スイッチ
バイメタルタイマ、電子式タイマ、モータータイマ(キープリレー付き)などがあり、遅延動作形タイマーの一種です。一定時間内に火炎が検出されないとき、点火の失敗とみなし出力の作動を解き、燃料の供給をストップさせます。バーナを再起動する場合は、不具合が解消したかどうか人間が確認し、手動でないと再起動できない作動保持機構になっています。

●火炎検出器
火炎の有無、強弱を検出し、これを電気信号に変換します。燃焼中の異常消火、火炎を検出できないときは、火炎検出器回路の異常発生時に、燃料遮断弁を閉止させる信号を出します。
火炎の検出には次の必要条件を満たさなければなりません。

○あらかじめ定められた条件に適合する火炎だけを検出すること
○正常な火炎と疑似火炎を誤って検出しないこと
○火炎検出器から送られた電気信号を電気的外乱の影響を受けないように正しく伝送すること

火炎検出器には硫化カドミウムセル、硫化鉛セル(CdSセル)、整流式光電管、紫外線光電管、フレームロッドなどの種類があり、燃料の種類(油、ガスなど)、燃焼方式(圧力噴霧式、蒸気・空気噴霧式、回転式)、燃焼量などを考慮し、適切なものを選ばなければなりません。

※セルとは電池の意味です。

●燃料遮断弁
燃料配管系バーナのそばに2つ取り付けられる自動弁です。蒸気圧力が上昇しすぎたり、低水位、不着火、異常消火、送風量低下、ダンパの開閉の不適切、油圧・ガス圧の過昇・過降などの異常なときに自動的に閉止し、燃料の供給を遮断します。直動弁、ダイヤフラム弁、液動弁(油圧を利用)、電動弁(モータで動く)などの種類があります。

●点火動作のプログラム
炉内ガス爆発事故を防止するため、点火を行う前に燃焼室、煙道の内部を十分に換気し、未燃ガスを排出しなければなりません。最近のボイラーはプログラムで自動運転が行われます。決まった手順で自動制御される方式をシーケンス制御といいます。



※プレパージとは事前に換気すること。ポストパージは事後換気です。

●点火装置
自動運転のボイラーの点火は、ほとんどがスパーク式点火装置によるものです。スパーク式点火装置は、点火用変圧器(トランス)により、7000~15000ボルト程度の高電圧に昇圧された電流が点火プラグの電極間での放電によるスパークを発し、主バーナ、点火用バーナの燃料に着火させます。点火方式の種類は直接点火方式(直接主バーナに点火)、パイロット点火方式(ガス燃料を用いた点火バーナを使用し、その点火炎によって主バーナに点火)のいずれかが用いられます。