ボイラーの概要

LESSON1 ボイラーの種類

レッスン1ではボイラーの種類について学習します。
ひとくちにボイラーといっても、様々な構造や大きさ等があります。種類も千差万別です。大きく分類すると4つになります。


レッスン2ではボイラーの構成について学習します。
ボイラーは燃料を燃やして、タンク内(ボイラー本体)の水等を加熱し、蒸気、温水をつくる装置です。火炉、ボイラー本体、附属品、附属装置から構成されています。それぞれの機能と構造をこれから解説します。

●火炉
燃料を燃焼し、高い熱を発生させるところで、燃焼装置と燃焼室から成り立っています。燃焼装置は燃料の種類によって、さまざまなものがあります。重油等の液体燃料や都市ガスや液化石油ガス(LPG)等の気体燃料にはバーナ、石炭等の固体燃料にはストーカ、火格子があります。燃焼室はバ-ナからの燃料や火格子上の燃料に着火燃焼させるところです。

●ボイラー本体
燃焼室からの熱で、ボイラー内の水を加熱し、蒸発させ、圧力のある蒸気や高温の水をつくるところです。高い圧力に耐えることが出来る胴、ドラムと多数の管などによって、つくられています。他に鋳鉄製のセクションを組み合わせたものもあります。

●附属品と附属装置
ボイラーを効率良く、安全に運転するために、さまざまな附属品と装置があります。ボイラーの運転管理には圧力計(水高計)、水面計、温度計、流量計、通風計等があります。安全のための装置には、安全弁、高低水位警報器等があります。その他、配管などには各種止め弁、コック、吹出し装置等がつかわれています。

LESSON3 ボイラーの容量(能力)と効率


ここでボイラーの種類の解説の前に、ボイラーの容量(能力)と効率について学習しましょう。


●ボイラーの容量(能力)とは
ボイラーの能力、すなわち容量は最大連続負荷の状態で、1時間に発生する蒸発量(kg/h)で表されます。ただし、条件等によって蒸気の熱量は異なるので、ボイラー容量を換算蒸発量で表すことがあります。

●ボイラー効率とは
燃料を燃焼させ発生させた熱量が、どれだけ蒸気を発生させるのに使われるかを示す割合です。計算方法は下のようになります。

ちょっと難しいかもしれませんが、しっかりおぼえてください。

LESSON4 ボイラーの構造と特長


レッスン1ではボイラーの大まかな種類を学びました。レッスン4では具体的にそれぞれのボイラーの構造とその特長を中心に解説します。いろいろなタイプがありますが、基本的にボイラーの構成は火炉、ボイラー本体、附属品、附属装置で成り立っています。そのことを頭に入れながら、学習してください。

●丸ボイラーについて
鋼製の大きな径の胴を持つボイラーのことです。立てボイラー、煙管ボイラー、炉筒煙管ボイラー、炉筒ボイラー等がこれにあたります。

丸ボイラーの特徴は
○比較的構造が簡単であり、取扱が容易です。
○設備費が安い。
○大きさが制限されるため、高圧のものや容量の大きなものには不向きです。
○起動から蒸気発生までに時間を要しますが、負荷の変動による圧力変動は少ない。
○同じ蒸発量のボイラーと比べると、保有水量が多いため、事故等で万一破裂したときは被害が大きい。

●丸ボイラーのそれぞれのタイプの特徴

▼立てボイラー
胴を立てに置き、燃焼室(火室)を下の方に置いたボイラー。横管式と多管式(煙管式)があります。横管式は燃焼室内に水部に連絡する少数の横管を採用したもので、伝熱面を増し、燃焼室が補強されます。多管式は伝熱面を増やすために、胴内に多数の煙管を設けています。

立てボイラーの特徴
○狭いところでも設置できます。据付け、移設が簡単にできます。
○ボイラー効率は低いので、小容量の用途に限られます。
○構造上、水面が狭いので、水分の多い蒸気になりやすい。
○小型のため、内部が狭いため、掃除、点検が不便である。


▼煙管ボイラー
胴の水部に沢山の煙管を取り付け、伝熱面を増やそうとしたものです。外だき横煙管ボイラー、内だき横煙管ボイラーがあります。蒸気機関車は内だき横煙管ボイラーと同じようなタイプを使用していました。古いタイプなので、ボイラー効率が悪く、現在では作られていません。

▼炉筒煙管ボイラー
丸ボイラーの中で、最も多く使われているタイプ。内だき式ボイラーで、胴を横に置き、胴内に径の大きい波形の炉筒(燃焼室)と多くの煙管を取り付けたものです。ボイラー効率も90%前後と良く、水管ボイラーに比べて、取り扱い、製作が容易です。工場用、暖房用として広く使用され、圧力1MPa程度の規模のものが多い。伝熱面積20~200m2、蒸発量10t/hから25t/h超まで。

炉筒煙管ボイラーの特徴
○コンパクトで、据付けにレンガ積みが不要なので、組立を工場で行い、パッケージ形式なものが多い。設置費用も安くすみます。
○自動発停、自動制御装置で、自動化されたものが多い。
○内部の構造が複雑で狭く、掃除や点検が難しく、良質な給水を必要とします。
○加圧燃焼方式を採用しているので、燃焼効率が良く、燃焼室熱負荷が高い。
○伝熱効果を高めるための特殊管(スパイラル管)を採用したものは、さらに燃焼効率を上げています。

▼炉筒ボイラー
工場用として使用されていたが、性能の向上等で、他のタイプに替わられ、最近はほとんど使われていません。円筒形の胴内に1本、または2本の炉筒を貫通させたもので、炉筒内には燃焼室があります。炉筒が2本のものが、ランカシャボイラー、1本のものがコルニシュボイラーと呼ばれます。

LESSON5 水管ボイラーについて


レッスン5は水管ボイラーについて解説します。ひとくちに水管ボイラーといっても、さまざまなタイプがあります。それぞれの特徴と違いをこれから学習します。

●水管ボイラーについて
胴と多数の水管でできており、低圧から高圧まで対応でき、大容量に適しています。水管ボイラーはボイラー水の流動方式により、強制循環式、自然循環式、環流式と大きく3つに分類できます。

水管ボイラーの特徴は
○燃焼室を自由な大きさにできるため、いろいろな燃焼方式、燃料が採用できる。
○構造的に大容量、高圧に適しています。
○伝熱面積を大きくとれるので、ボイラー効率(熱効率)が大変良い。
○伝熱面積当たりの保有水量が少ないので、起動から蒸気発生までの所要時間が短い。
○負荷変動により、圧力、水位が変動しやすいので、繊細な調整が必要です。
○水処理の注意、とくに良質の水の給水が必要。高圧ボイラーでは水管理に細心の注意をはらうことが大切です。

●水管ボイラーのそれぞれのタイプの特徴
自然循環式水管ボイラーとは水管ボイラーの中でもっとも広く使用されているタイプです。ドラムと多数の水管でボイラー水の循環回路をつくるボイラーで、水管の中で発生する蒸気により、密度が減少することを利用して、ボイラー水の自然循環を行うものです。最近は直管より曲管が多く採用されています。立て水管式ボイラー、曲管式水管ボイラー、放射型ボイラーがあります。

▼立て水管ボイラー
比較的、小・中規模のボイラーに使われています。

主な特徴は
○燃焼室の上の中心にバーナ、その周りに円環状水室を設け、下の水室と直管でつなげています。
○燃焼室の内面の高温ガスに接触する受熱の大きな水管は上昇管、外側の低温燃焼ガスに接触する受熱の小さい水管は下降管と、循環を構成しています。

▼曲管式水管ボイラー
炉壁内面に水管を配した水冷壁と、上下ドラムをつなぐ水管群を組み合わせたものが多いです。2胴形(蒸気ドラム1個と水ドラム1個)、3胴形(蒸気ドラム1個と水ドラム2個)がありますが、2胴形ガ多く使用されています。小型のものでは、単胴のタイプもあります。        


▼放射形ボイラー
高圧大容量ボイラーには放射形ボイラーが多く使用されます。炉壁の全面を水冷壁にしているので、接触伝熱面が少ない。

強制循環式水管ボイラーとは
循環ポンプを取り付けることで、弱まった循環力を高めるため、ボイラー水の循環を強制的に行ないます。貫流ボイラーとはドラムがなく、水管ボイラーの一種です。水は給水ポンプによって長い管を流れ、予熱部、蒸発部、過熱部等を貫流して、蒸気として利用されます。高圧大容量ボイラーと小容量低圧貫流ボイラーのタイプがあります。低圧小容量の多くは、蒸気管の出口に気水分離器が取り付けられています。

※気水分離器とは蒸気から水滴を分離する装置です。

貫流ボイラーの特徴は
○管だけで構成され、蒸気ドラム、水ドラムがないので、高圧ボイラーに向いています。
○自由に管を配置できるので、全体をコンパクトにすることが出来ます。
○伝熱面積当たりの保有水量が少ないので、起動から蒸気が発生するまでの時間が短い。
○圧力変動が起きやすいので、給水量、燃料量の自動制御装置が必要です。
○管内で給水のほとんどが蒸発することが多いので、不純物を含まない給水が大切です。
○圧力が水の臨界圧力を超えるボイラーは、すべて貫流式です。
○水管が破裂した場合、飽和水の保有量が少ないので、高圧の場合でも被害は比較的少ない。

※臨界圧力とは飽和水が潜熱なしになる圧力です。
臨界圧力=22.06MPa

目に触れることが少ないだけに、ボイラーの種類は、以外と多いのにびっくりしている方も多いでしょう。もう少し、ボイラーの種類について、学習します。それぞれの特徴をしっかり覚えてください。

LESSON6 鋳鉄製ボイラーについて


レッスン6では鋳鉄製ボイラーについて、解説します。

●鋳鉄製ボイラーについて
簡単にいうと、鋳鉄で作られたボイラーです。主に暖房用(低圧、蒸気発生用)、温水用として、使用されています。法令で構造規格があり、暖房用の蒸気ボイラーで、最高使用圧力0.1MPa以下に決められています。同様に温水ボイラーは0.5MPa以下で、温水温度も120℃以下と決められています。構造は鋳鉄製のセクションというものを複数、前後につなげたものです。現在の鋳鉄製ボイラーはウエットボトム形が多く、加圧燃焼方式で、下部まで水部のあるものが多く採用されています。ドライボトム形もありますが、利用が少なくなっています。一般的に、セクションの連結数は20ぐらいまでです。求める能力に応じて、セクションの数を決めます。伝熱面積は50m2ぐらいまでです。セクションには連絡口というものがあり、その穴にこう配のついたニップルをはめ込んで結合し、ボルトで連結し組み立てます。   


鋳鉄製ボイラーの特徴は
○鋼製ボイラーに比べて、腐食がしにくい。
○鋳鉄製なので、強度が鋼製に比べて低いため、高圧のもの、大容量のものには向かない。
○内部構造が複雑であるため、掃除、点検が難しい。
○セクション数を調整できるので、必要に応じた能力がだせます。
○伝熱面積のわりには、据付け面積が小さい。
○組み立て、解体、搬入がしやすい。
○鋳鉄製なので、急熱、急冷などで、割れが生じやすい。

※鋳鉄(ちゅうてつ、cast iron)は、炭素Cを2.14~6.67%含む鉄Feの合金。Fe-C(2成分系)状態図の共晶点(炭素含有量4.2~4.3%)付近で融点が低いため、溶融させた金属を型に流し込み製造するプロセスの鋳造に用いられる。伸びがなく硬くて脆(もろ)い。銑鉄に比べてケイ素Siを多く(約1~3%)含有しているものが用いられることが多い。 (Wikipediaより)

LESSON7 特殊ボイラーについて


レッスン7では、特殊ボイラーの学習です。

特殊ボイラーは目的によって、さまざまな種類があります。廃熱ボイラー、特殊燃料ボイラー、特別の熱媒ボイラー、特殊な過熱方式のボイラーなどです。

●廃熱ボイラー
加熱炉、溶解炉、セメントキルンなどの高湿廃ガスの熱を利用したものです。自然循環式、強制循環式があります。

●特殊燃料ボイラー
石油コークス、産業廃棄物、木材、廃タイヤ、都市じんかいなどを燃料にしているボイラーです。特殊燃料ボイラーにはソーダ回収ボイラー又は黒液回収ボイラーと木くず、バガス、バ-ク、チップ等を燃料とするボイラーがあります。

●流動層燃料ボイラー
石炭、低品位炭、バーク、石油コークス、廃棄物等を燃料とするボイラー。

●熱媒ボイラー
標準大気圧で飽和温度200~400℃の有機熱媒を利用し、ボイラーの圧力が低圧で、工場での加熱、蒸留、乾燥等に利用されている。ボイラーの種類とそれぞれの特徴が理解できたら、次はレッスン8から、ボイラー各部の構造を学習します。ひとくちにボイラーといっても、奥が深いことが分かってきたと思います。ボイラー各部の構造レッスン8からはこちら図とか写真がないと分かりづらいと思います。今後は図などを追加しながら、分かりやすくします。しばらく不便ですが、ご了承ください。