ボイラー各部の構造

ここではボイラーの各部の構造を学習します。レッスン1~7ではボイラーの種類とそれぞれの特徴を解説しました。ボイラーの概要をきちんと理解した方は、レッスン8からはボイラー各部の構造を学習します。

LESSON8 鋼製ボイラーの胴とドラムについて

レッスン8では鋼製ボイラーの胴とドラムについて、学習します。

●胴とドラム
ボイラーの主要部分の胴又はドラムは、円筒形になっています。円筒形なっているには、理由があります。同じ素材で、同じ厚さのものでは、他の形よりも大きな強度が発揮できるからです。胴・ドラムは鋼板を円筒状に巻いたものに、両端を鏡板というものでふさいだもので、接続部分は継手といいます。継手は軸(長手)方向と周方向の2種類があり、溶接で作られます。



胴の内部に圧力がかかると、引張応力が発生します。引張応力には周方向の応力、軸方向の応力があります。周方向の応力は軸方向の応力の2倍です。軸方向を裂こうとする力は、周方向を裂こうとする力の2倍になるということです。軸継手は周継手の2倍の強度が必要です。マンホールのような穴はだ円形にし、長径を周方向にしています。そうすることによって強度の低下を抑えています。



周方向の応力、軸方向の応力を求める計算式は下のようになります。



※胴とドラムのちがいは?丸ボイラーの場合は胴、水管ボイラーの場合はドラムといいます。

胴の両端には鏡板というカバーを溶接で取り付けます。レッスン9ではその鏡板のことを学習します。

LESSON9 鏡板について

胴(ドラム)の両端を覆う板が鏡板(かがみいた)です。煙管ボイラーの場合は煙管を取り付ける鏡板を管板(くだいた)といいます。鏡板は一般に1枚の鋼板から作られ、大きく分けて4種類の形状があります。

●平鏡板  ●皿形鏡板  ●半だ円体形鏡板  ●全半球形鏡板

一般的によく使用されているのは皿形鏡板です。高圧ボイラーは半だ円体形鏡板、全半球形鏡板が使用されます。

LESSON10 炉筒と火室について

レッスン10は炉筒と火室について学習します。
丸ボイラーでは炉筒は胴の内側に水平方向にあり、燃焼室として使用されます。立てボイラーの燃焼室は火室と呼ばれます。立てボイラーの火室は円筒形で、上部を下部より小さめにすることで、水循環をよくしています。

●炉筒の種類
形状は2種類あり、平形炉筒と波形炉筒にわけられます。現在使用されているのは、小径で短いものを除いて、ほとんどが波形炉筒です。

●平形炉筒について
大部分が円筒形ですが、炉筒が長くなるものは、一部を波形にし、熱による伸縮を吸収する形状にしています。

●波形炉筒の特徴
波形の炉筒で、波形にはモリソン形、ブラウン形、フォックス形があります。

平形炉筒と比較した場合の波形炉筒の長所は
○熱による膨張に対し、伸縮性に富んでいる。
○同じサイズの平形炉筒よりも伝熱面積を大きくすることができる。
○外圧に対する強度が大きい。

※外圧=圧縮応力といい、押しつぶそうとする力のこと

短所は
○製作工程上コスト高である。
○ボイラー水の不純物、すすが付着しやすい。
○形状的に掃除がしにくい。



※上の図はフォックス形です。

LESSON11 補強材ステーについて

レッスン11ではボイラーの強度を確保するための補強材、ステーについて学習します。
ボイラーの胴、ドラムのふたの役目をする平鏡板、皿形鏡板は圧力に対し弱いため、ステーという補強材を使います。それによって強度が増します。レッスン11はステーの役割と胴の穴について学習します。

ステーは使用する箇所によって、管ステー、ガセットステー、棒ステーがあります。

●管ステーについて
煙管より厚い鋼管を管板に溶接で取り付けるか、鋼管の両端をネジ式に加工して、管板のネジ穴にねじ込んで取り付けるものです。煙管ボイラー、炉筒煙管ボイラーに使用されます。火炎のあるところに管ステーを取り付ける場合は縁のところを曲げ、焼損を防ぎます。最近は溶接技術が進んでおり、管ステーをはめ込んだあとに、ころ広げをし、溶接で取り付けます。

※ころ広げとは管を穴に差し込み、管を工具で内部から広げて密着させる方法

●ガセットステーについて
平板(ガセット)により平鏡板を胴で支えるものです。ガセットステーを鏡板に取り付けるほうは、強度の高い突き合わせ両側溶接、胴に取り付けるほうは突き合わせ両側溶接、または両側すみ肉溶接にしなければなりません。煙管ボイラー、炉筒煙管ボイラーに使用されます。



●棒ステーについて
棒状のもので、胴の長手方向、両側の鏡板の間に取り付けたものを長手ステー、斜め方向、鏡板と胴板の間に取り付けたものを斜めステ-といいます。

●胴の穴について
ボイラー構造規格によって、掃除穴、マンホール、検査穴の最小寸法は決められています。レッスン8の図でも分かるように、だ円形、長方形の穴をボイラーに設ける場合は、短径、短い辺を胴の軸方向に配置します。ボイラーの鏡板、胴には検査や掃除のための穴が必要です。穴のある場所はどうしても強度が落ちるので、補強材を取付けたり、フランジを打ち出したりすることをしなければいけません。
○マンホール
掃除、検査のために胴の内部に出入りする穴を、マンホールといい、JIS B 8201「陸用鋼製ボイラー構造」で大きさが決められています。だ円の場合は長径375mm以上、短径275mm以上、円形は直径375mm以上となっています。
○掃除穴・検査穴
掃除穴は内部の掃除をする穴で、だ円形、円形にします。検査穴は内部の点検用で、一般に円形にします。

LESSON12 附属品と附属装置について

レッスン12ではボイラーの付属品・附属装置について学習します。ボイラーを安全に、効率的に運転するために、付属品の助けにより、さらに能力を発揮させます。安全弁、圧力計、水面計、流量計、給水系統装置、吹出し装置、送気系統装置、エコノマイザ等がこれにあたります。

●ボイラーの安全装置
ボイラーの安全装置は安全弁、逃がし管、逃がし弁、高低水位警報装置、低水位燃料遮断装置、燃料安全装置等があります。

○安全弁について
安全弁はボイラーにかかる圧力が異常に高く、危険な状態になり、破裂を防ぐために取り付けます。ボイラーが最高使用圧力に達した場合、自動的に弁が開き、蒸気を吹出し、圧力の上昇を防ぎます。安全弁には、ばね式、てこ式、おもり式があります。

●ばね安全弁
最近のボイラーのほとんどがこのタイプです。ばねの力により、弁棒が弁を弁座に押さえる仕組みになっています。吹出し圧力は、ばねに調整ボルトがあり、それを締めたり緩めたりして、ばねが弁座を押し付ける力を変えることによって調整します。
弁座から弁が上がる距離を揚程(リフト)といいます。ばね安全弁には揚程式と全量式があります。揚程の小さいものを揚程式、大きいものを全量式といいます。安全弁にはこの他にも、てこ安全弁、おもり安全弁がありますが、ばね安全弁は作動が確実で揺れ動くボイラーにも使用できるので、ほとんどのボイラーはばね安全弁です。



●安全弁の排気管
○吹き出し蒸気からの危険を防ぐために、排気管の放出端の位置は近くの操作床上2m以上高さが必要とされています。
○排気管端は、吹き出し、漏れがあった場合、これらの事がボイラーの前で見えるところであることが大切です。排気管端をボイラー室外に出す必要がある場合は、安全弁に近い排気管に漏れ知らせ穴か、小さい分岐管を取り付けることが必要です。
○排気管は安全弁に無理な力がかからない構造にしなければならない。
○安全弁箱、排気管底部には、ドレン抜きを設ける。このドレン管には弁を取り付けてはいけません。

●低水位燃料遮断装置
ボイラーの運転中、決められた最低の水位(安全水位面)以下になった場合、自動的に燃焼を停止し、警報の表示をおこなう装置。

●高・低水位警報装置
ボイラー胴または蒸気ドラムんの水位が異常に上昇したり、低下したりしたときに、警報を表示する装置です。

LESSON13 圧力計について

レッスン13ではボイラーの付属品・附属装置の中の安全装置、圧力計について学習します。
圧力計はボイラー内の圧力が正常に保たれているかどうか、チェックするのに使用されます。

●圧力計の構造について
圧力計は主にブルドン管式のものが使用されています。ブルドン管とは偏平に管を円弧状に曲げて、一方を固定し、もう一方を閉じて、その先に扇形歯車を噛み合わせます。ブルドン管に圧力が加わると、ブルドン管が伸びて、歯車を動かします。その軸の指針も動き、圧力が分かります。

●圧力計の取付け
圧力計は胴や蒸気ドラムの一番高いところに取付けるのが原則です。圧力計は直接取り付けると、蒸気がブルドン管に入り、温度が高くなり過ぎ、誤差が生じます。それを解消するために、胴と圧力計の間にサイホン管を取付け、その中に水を入れて、ブルドン管に蒸気が直接入らないようにします。圧力計の取付けるときの注意は、垂直に取付けること、圧力計のコック、弁は開閉状態が分かりやすいこと、またJISで規定されている、コックはハンドルを管軸と同じ方向のとき、開くようにしておかなければなりません。


ブルドン管圧力計の基本構造図(株式会社第一計器製作所提供)



ブルドン管の形状の種類(株式会社第一計器製作所提供)

※圧力計の構造図は株式会社第一計器製作所から提供いただきました。もっと詳しく圧力測定の基礎知識を学びたい方はこちら株式会社第一計器製作所ホームページへ

LESSON14 水面測定装置(水面計)について

レッスン14ではボイラーの付属品・附属装置の中の安全装置、水面測定装置(水面計)について学習します。
ボイラー水は多すぎても少なすぎても、事故につながることがあります。安全を保つためには、標準のボイラー水を常に把握し、ボイラー胴内の水位を正しく知る必要があります。このために使用するのが、水面測定装置(水面計)です。一般的にはガラス水面計が多く使用されています。

●ガラス水面計について
ガラス水面計には上下に水面計用のコックが取付けられています。このコックを通じてボイラーの胴や蒸気ドラムとつながっています。ボイラー水は下のコックを通り、蒸気は上のコックを通って入り、ガラス管にボイラー内部の水位が現れます。ガラス管が破損し交換の場合、ガラス管を掃除する場合、水面計の機能チェックの場合にコックは使用されます。

●水面計の種類について
○丸形ガラス水面計最高使用圧力が1MPa以下のボイラーに使われることが多い。ガラス管の内径は10mm以上と決められています。ガラス管が細いと、毛管現象で実際より水位が高く表示される恐れがあります。○平形反射式水面計
○平形透視式水面計
○二色水面計
○マルチポート水面計(円形透視式)

●差圧式水位検出器(遠方水面計)
ボイラー胴、蒸気ドラムの蒸気部と水部とを結ぶU字管に、水銀とボイラー水を入れ、ボイラー内の水面を基準面との圧力差によって水面を判断することができます。水面に浮子を用いるか、浮子に鉄片を取付けて、変位を検出し、遠方で水位の変化を知ることができます。

●験水コック
ボイラー胴、または水柱管にコックを取付け、これを開閉することで、ボイラー水の位置を判断できるようにしたものです。験水コックはガラス管水面計と同じ範囲に、原則として3箇所取付けます。

●水面計の個数について
蒸気ボイラーには最高使用圧力により、JISで決められた水面計を原則として2個以上を見やすい位置に取付けます。(貫流ボイラーを除く)

●水面計の取付について
ボイラーには安全低水面があり、水面計はそれと同じ高さに取付けます。水面計は、ボイラー本体、蒸気ドラムに直接取付けるか、水柱管を設け、これに取付けます。

LESSON15 流量計について

レッスン15ではボイラーの付属品・附属装置の中の流量計について学習します。
ボイラー水の供給量、燃料油の使用量などを知るために必要なのが流量計です。差圧式、容積式、面積式があり、指示方式によって、その瞬間の流量※を示す指示計と、ある時間をまとめて指示する積算計があります。

※流量(りゅうりょう)とは 、流体(液体と気体)が移動する量(体積,質量)を表す物理量である。ふつう、単位時間当たりにどれだけの量が移動したかを表す。流体の量として体積を考えた場合は体積流量(たいせきりゅうりょう)という。一般に流量と言った場合は体積流量を指すことが多く、日本の計量法でも体積流量のことを単に流量と表現している。単位は、国際単位系(SI)では立方メートル毎秒(m3/s)を用いる。計量法では他に立方メートルをリットルに、秒を時、分に置き換えた単位も認めている。海洋学では、海流の体積流量の計量に1キロリットル毎秒に等しいスベルドラップ(Sv)が用いられる。(Wikipediaより)

●差圧式流量計(オリフィス流量計)
配管の途中にオリフィスプレート(中央に穴の開いた板)を設けて、プレートの前後の圧力差を利用します。



●しぼり流量計(ベンチュリ計)
配管の途中にしぼりを設けて通過流量によってしぼりの前後の圧力差が変わるのを利用します。
流体力学の原理では差圧は流量の二乗に比例します。これを利用して流量を知ることができます。



●容積式(オーバル)
流量計だ円形の歯車を回転させて、流量を測ります。流体の流れによって回転させると、歯車とケーシング壁の間にある空間部分の量だけ流体が流れ、歯車が回転します。その回転数を測定して流量を計量します。流量は体積で表示されます。

※オーバル(oval)は英語で、だ円という意味



●面積式流量計
垂直に置かれた管(ティーバ管)の中を流体が下から上に向かって流れると、管の中のフロートが移動します。その位置で流量を知ることが出来ます。フロートが上に移動するほど、テーバ管とフロートの間の環状面積が大きくなり、流量はこの環状面積に比例します。

LESSON16 通風計について

レッスン16では通風計について学習します。
通風計は通風力(ドラフト)を測定します。計測するところ(例えば燃焼室の炉壁に穴をあけ、ここに小さい管を通す)のガス、空気の流れの圧力を、大気の圧力と比較して、その差を水柱で確認します。通風計の種類にはU字管、傾斜式があります。

LESSON17 給水系統装置について

レッスン17では給水系統装置について学習します。
給水系統とは、給水ポンプ、給水タンク、給水流量計、給水弁、逆止め弁、ボイラー内給水内管、そしてこれらをつなぐ配管を総称していいます。



●給水ポンプとは
ボイラーに水を送り込むのが給水ポンプです。主に遠心ポンプを使用します。遠心ポンプは湾曲したたくさんの羽根のある羽根車を回転させ、遠心作用で水に圧力、速度エネルギーを与えます。羽根車の中心から吸い込まれた水は、半径方向外向きに流れ、速度エネルギーは渦巻室(ボリュートケーシング)を通過する間に圧力エネルギーに変換され、吐き出し口から外に出ます。ポンプの種類はディフューザポンプ、渦巻ポンプ、円周流ポンプがあり、特徴もさまざまです。

※遠心ポンプは、案内羽根のあるディフューザポンプ(タービンポンプ)と案内羽根のない渦巻ポンプに分類されます。

●ディフューザポンプ(タービンポンプ)
羽根車の外周にある案内羽根に入り、水の速度エネルギーを圧力エネルギーに変えることができ、段数を増やすことで、圧力を高めることができます。(多段ディフューザポンプ)高圧ボイラーに使用されます。

●渦巻ポンプ
羽根車の回転によって生ずる遠心力を応用して水を吸い込み、押し出すものです。低圧用ボイラーの給水、温水循環用として使用されます。

●円周流(渦流)ポンプ
ポンプ吸い込み口に入った水が、高速回転する羽根車の外周に切り込まれた水室に入り、遠心力を与えられ吹出しに小さい駆動力で1.5MPa位までの揚程が得られます。給水量が少ないので、小容量蒸気ボイラーの給水に使用されています。

●インゼクタ
給水装置の一種で、蒸気の噴射力を利用して給水します。比較的圧力の低いボイラーに使用されます。給水ポンプの予備給水用としても使用されます。ポンプの水はストレーナ(濾し器)、逆止め弁、給水弁の順に通り、ボイラーに給水されます。

●給水弁・逆止め弁
給水弁、逆止め弁は給水管のボイラー側に給水弁、ポンプ側に逆止め弁を取り付けます。ボイラー内に圧力がある場合、給水弁を閉じて逆止め弁を掃除や修理することができるようにするためです。給水は給水ポンプの圧力がボイラーより高い圧力で、ボイラー内に送り込まれますが、停電等で給水ポンプ側の圧力がボイラー内の圧力より低くなった場合には、給水逆止め弁が作動し、ボイラー水が給水ポンプの方へ逆流するのを自動的に防止します。給水弁の種類はアングル弁、玉形弁(グローブバルブ)があります。逆止め弁の種類にはスイング式、リフト式があります。

●給水内管
給水内管の役割は、給水がボイラー胴内または蒸気ドラム内の1カ所に集中すると急激な温度差が起り、水循環を乱したり、胴・ドラム・管の膨張が不同になって、歪みを生じたり、漏水を起こしたりして、ボイラーを損傷させることがあり、これを防止するためです。給水内管は長い鋼管にたくさんの小さな穴があり、胴内に広範囲に分布状態で給水します。安全低水面より少し下に取り付けます。また、取り外しやすい構造で、掃除・点検がしやすいようになっています。給水内管の直径、長さ、水の噴射穴等は、ボイラーの容量によって違います。

LESSON18 吹出し装置について

レッスン18では吹出し装置について学習します。
ボイラーの給水で不純物がボイラー内にたまります。水が蒸発するにしたがって、濃縮され、沈殿物としてたまってきます。その沈殿物を排出するために、胴・水ドラムの底に吹出し用の弁またはコックを設けた吹出し管を取り付けます。また、ボイラー水の濃縮する胴、または蒸気ドラムの水面近くに吹出し管を取り付け、これにコックや弁を取り付けます。

●吹出し弁・吹出しコック
吹出し管に取り付ける吹出し弁は、沈殿物がたまらない構造のY形弁(漸開弁)か仕切弁を使用します。小容量の低圧ボイラーにはコックが使われ、大部分が1個となっています。スラッジなどによる故障を避けるために、玉形弁は使用しません。

※スラッジとは水の中の炭酸塩などが薬剤と反応した沈殿物などをいう。

最高使用圧力が1MPa(メガパスカル)以上の大形ボイラー、高圧ボイラーでは、構造規格で直列に2個の吹出し弁を設け、ボイラーに近い方には、急開弁を取り付け、遠い方にはY形弁を取り付けます。この場合の弁の操作は、最初にボイラー側から開きます。日常運転のボイラーは、ボイラー内に圧力がある場合は、運転する前に吹出しを行います。ボイラーを停止できないときは、蒸気圧力が低いときに行います。水管ボイラーの水冷壁の吹出しは、過熱が原因ですので、運転中は絶対禁止です。鋳鉄製ボイラーの場合、吹出しは極少量ですが、吹出しコックを設けます。吹出しの場合は燃焼を止め、ボイラー水の温度を下げてから行います。

●連続吹出し装置
中容量以上または連続で運転しているボイラーは、ボイラー水の濃度を一定に保つように、調節弁によって吹出し量を加減します。ボイラー運転中に常時少しづつ連続的に吹出させる装置を連続吹出し装置といいます。たくさんのボイラーで採用され、安全低水面より少し下に取り付けられます。吹出し水の熱を熱交換器で給水に吸収させる方式になっています。熱の損失を防ぐための工夫です。

LESSON19 送気系統装置について

レッスン19ではボイラーの送気系統装置について学習します。
ボイラーで発生した蒸気を使用先へ送りだすさまざまな装置のことです。装置の種類は主蒸気弁、主蒸気管、蒸気ヘッダ、蒸気配管、蒸気トラップ、減圧弁、ボイラーの種類によって気水分離器、沸水防止管などで構成されています。

●主蒸気管(メーンスチームパイプ)
主蒸気管とはボイラーで発生した蒸気を使用先へ送る管のことです。主蒸気管の配置については、管がカーブしている箇所は十分な半径をもたせ、ドレン(復水)がたまらないように適正に傾斜をつけ、要所に蒸気トラップを取り付けなければなりません。使う目的によっては、主蒸気管を蒸気だめにつなぎ、そこからたくさんの配管をつなぎ、使用される場所へ送気されます。配管が長いときは温度の変化によって、管は収縮を起こします。その影響を受けないように、配管の途中に伸縮継手(エキスパンションジョイント)を取り付けます。伸縮継手にはいろいろな形式がありますが、湾曲形(ベンド)のものが多く利用されています。伸縮継手の種類は他にU字形、ベローズ(蛇腹形)、すべり形などがあります。

※ドレンとは、蒸気が冷却され水に戻ってしまうこと、復水ともいう
※蒸気トラップとは、蒸気使用設備内部、配管内部にたまったドレンを蒸気圧力によって自動的に排出する装置のこと

●主蒸気弁(メーンストップバルブ)
送気の開始、停止を行うために、ボイラーの蒸気取出し管、過熱器の出口に取り付けるものです。アングル弁、玉形弁、仕切弁、蒸気逆止め弁などの種類があります。

○アングル弁
蒸気入口と出口が直角になったものです。蒸気は弁の下の方から入り、横から出ます。

○玉形弁(グローブバルブ)
蒸気の入口と出口が一直線上にあり、弁の中で蒸気がS字形に流れるので、抵抗が多いのが特徴です。入口と出口の角度が45度のY形弁は抵抗が少ない弁です。

○仕切弁(ゲートバルブ)
蒸気が直線状に流れるので、抵抗が非常に少ない弁です。

○蒸気逆止め弁(ノンリターンバルブまたはチェックバルブ)
ボイラーが2基以上、蒸気管で連結されている場合、逆止め弁を主蒸気管に取り付けます。逆止め弁は2種類あり、スイング式とリフト式があります。蒸気逆止め弁は、ボイラーの運転中、弁は開いているが、入口側の圧力が低下したり、出口側の圧力が高くなったりした場合、弁体は出口側圧力によって弁座に押し付けられて閉じ、蒸気が胴やドラムに逆流することを防止します。

○減圧弁
発生蒸気の圧力と使用箇所の蒸気圧力の差が大きいとき、または使用箇所での蒸気圧力を一定に保ちたいときに使用されます。入口側の圧力や流量に関係なく、出口側(減圧側)の圧力を一定に保つことができます。

●気水分離器(沸水防止管)
水滴の混じらない蒸気を取出すためのものです。蒸気取出し口は水面のところより沸騰が盛んなので、湿り度の多い蒸気が取出されやすくなるため、これを防ぐことが目的です。これはドラムや胴の中の蒸気出口のすぐ下に取り付けられており、水分の少ない飽和蒸気を取出します。スクラバ式、サイクロン式などの種類があります。



●蒸気トラップ
蒸気使用設備内部、配管内部にたまったドレンを、蒸気圧力により自動的に排出する装置です。大きく分けて3つの種類、メカニカル式、サーモスタチック式、サーモダイナミック式があり、さらに中分類にわかれます。

LESSON20 ボイラーの附属設備

レッスン20ではボイラーの附属設備について学習します。
附属設備には過熱器、エコノマイザ、空気予熱器、すす吹き装置などがあります。

●過熱器
ボイラーで発生する飽和蒸気を、さらに過熱して過熱蒸気をつくるためのものです。現在、蒸気原動機は、熱効率を上げるために過熱蒸気を使用するのが一般的です。

●エコノマイザ(節炭器)
ボイラーの熱損失の中で、一番大きいのは排ガスに含まれている熱量です。この熱を利用して給水の予熱に利用する装置のことです。ボイラー効率の向上と燃料の節約になります。エコノマイザを煙道に設けると、通風が多少悪くなりますので、人工通風で通風力の低下を防止します。エコノマイザにはさまざまな種類があります。



●空気予熱器
ボイラーの構成装置の一つで、エコノマイザ(節炭器)から出た燃焼ガスの熱を回収して空気を予熱し、この空気を炉に送り燃料の燃焼を助けたり、煙突からの排ガスの温度を低くしてボイラーの効率を高めるための装置のことです。

空気予熱器の利点
○ボイラーの効率の上昇
○燃焼状態が良好になる
○燃焼温度が上昇し、炉内伝熱管の熱吸収量が増える
○水分の多い低品位燃料の燃焼に効果的である
しかし、窒素酸化物(NOx)発生量が増加することがあります。

空気予熱器の中でも、燃焼ガスの予熱を利用するものには、2種類あります。熱交換式=燃焼ガスの熱を伝熱面を隔てて空気側に移動させる構造。伝熱面の形状により、鋼管形と鋼板形があります。再生式=燃焼ガスにより加熱された伝熱エレメントが、空気側に移動し空気を予熱する構造

●すす吹き装置(スートブロア)
水管ボイラーの伝熱面に付いたすすを吹き飛ばす装置です。伝熱面の熱吸収効果を上げ、ガス側の通風損失の増加を防ぐために使用されます。回転式、抜き差し式の2種類あります。

○回転式
ボイラーのガス通路、エコノマイザ、空気予熱器などのすす払いに使用されます。たくさんの噴射口のある噴射管とこれを回転させる装置からできており、噴射管は壁から差し込まれています。回転しながら蒸気または空気を噴出させて吹き払い掃除します。電動式と手動式があります。

○抜き差し式
燃焼室及び高温ガス中の管群などに使用されます。先に1~2個の噴射口のある噴射管を、使用するときに炉壁内に差し込み、回転させながら空気または蒸気を噴射します。使った後は抜き出しておきます。

LESSON21 温水ボイラーと暖房用ボイラーの附属品

レッスン21では、ボイラーの構造の最後の講議、温水ボイラーと暖房用ボイラーの附属品について学習します。
温水ボイラーはボイラーの形式ではなく、利用方法による分類で、蒸気ボイラーに相対するものです。多くのボイラーは蒸気ボイラーとして使用されていますが、鋳鉄製ボイラー、立てボイラーの場合は約50%が温水ボイラーとして使用されます。

水高計
温水ボイラーの圧力を測る計器です。蒸気ボイラーの圧力計にあたるもので、構造、作用も同様です。水高計から膨張タンクの水面までの高さが約10mの場合、目盛は0.1MPaを示します。水高計は開放膨張タンクの液面を指し、その液面によりボイラーにかかる圧力を指すことになります。水高計はボイラー前面の中央最上部、見やすいところに取り付けます。

●温度計
ボイラー水の温度を測るものです。一般的には水高計と組み合わせた温度水高計が使用されます。

●逃がし管(膨張管)
温水ボイラーの水はかなりの高温に加熱されるため、水の体積は膨張し、ボイラー本体が破裂するおそれがあります。これを防ぐためには、ボイラー水の膨張分を逃がすための安全装置、逃がし管、逃がし弁を設けなければなりません。逃がし管は途中に弁やコックのない大気解放管と呼ばれるものであり、高いところに設けた膨張タンクに直結しています。内部の水が凍結するおそれのある場合は、保温などする必要があります。膨張タンクの種類は開放形、密閉形があり、験水管、オーバーフロー管、補給水配管、配水管などが設けられています。密閉形には逃がし弁が取り付けられます。

※験水管とは膨張タンク内の水位をみるもの

●逃がし弁
温水ボイラーで密閉形膨張タンクの場合、逃がし管を設けない場合に逃がし弁が用いられます。水の膨張による圧力上昇で弁体を押し上げ、水を逃がします。蒸気ボイラーの安全弁に相当します。構造的にはばね安全弁と似ています。JISにより逃がし弁の径は、伝熱面積ごとに最小径が決められています。

●温水循環装置(ポンプ)
温水暖房、蒸気暖房はボイラーの温水、蒸気を放熱器に送り、放熱で低温になった温水、凝縮水をボイラーに送り返し、給水する温水循環が行われます。これらを行うのが温水循環装置です。ボイラー運転中は、水のもれなどで補給水を用意することが必要です。このために給水装置が取り付けられています。給水はボイラー本体に直接は入れずに、返り管に入れます。膨張タンクがある場合はここに入れます。
温水循環装置には3種類のポンプがあります。

○温水循環ポンプ
温水暖房ボイラーは一般的に温水循環ポンプを使用した強制循環方式です。温水循環を自然に行う自然循環方式を採用することもあります。ボイラーで加熱された水を放熱器に送り、低温になった水をまたボイラーに送り返します。多量の温水を循環させます。ポンプの揚程(リフト)は、送り管、返り管の抵抗と水頭に勝るように決められます。

○凝縮水給水ポンプ
重力還水式の蒸気暖房装置に使用されるポンプです。凝縮水は凝縮水槽まで自然流化し、そこからはボイラーに流すためにこのポンプが使用されます。凝縮水槽(レシーバ)、モータ直結渦巻ポンプ、自動スイッチ、凝縮水槽内のフロートで構成されています。運転は凝縮水槽上にあるフロート開閉器で自動的に行われます。水位の高さに応じて、開閉器が自動的に作動し、凝縮水槽の水位の高いときはモータを回し、低くなると止まります。

○真空給水ポンプ
蒸気暖房装置に多く使用されています。給水ポンプと真空ポンプで構成され、凝縮水と配管中の空気、蒸気を吸引します。真空給水ポンプは、返り管内を真空度(-13~-27kPa)にして、返り管途中の凝縮水を受水槽に吸引するとともに、ボイラーに給水するもので、真空は自動的に保たれるようになっています。真空度が下がってくると、自動的に真空ポンプが作動して、真空度を上げます。



ここまではボイラーの各部の構造について学習してきました。これからはボイラーの自動制御について学習します。