ボイラー技士の基礎知識

ボイラー技士のことを学ぶ上で、必要な基礎知識をここでしっかり学習してください。
ボイラーの構造を理解するには、温度、圧力、比体重・密度のことや水、蒸気等を知ることが大切です。理科・物理は不得意という方も、がんばりましょう。

●温度とは
冷たさ、温かさ、熱さの度合いを表すものです。これは普段見なれている温度計ではかります。温度の単位は普段は度(℃)を使います。この単位をセルシウス(摂氏)温度といいます。1℃とは標準大気圧のもとで、水の凍る温度(水の氷点)を0℃、水が沸騰する温度(沸点)を100℃とし、この間を100等分したものを1℃としました。

●絶対温度とは
学問的に最低温度はマイナス273℃です。この最低温度を0℃とし、セルシウス温度の目盛りと同じ割合で表した温度を絶対温度(熱力学温度)といいます。単位はケルビン(K)を用います。

熱力学温度(K)=摂氏(℃)+273

という関係が成り立ちます。
18℃であれば、絶対温度は18+273で291Kになります。マイナス15℃であれば-15+273で257Kとなります。

●圧力とは
物体の単位面積にかかる力のこと。単位はパスカル(Pa)です。圧力計で測定します。パスカル(pascal、Pa)は国際単位系 (SI) の圧力・応力の単位です。その名前は、圧力に関する「パスカルの原理」に名を残すブレーズ・パスカルにちなんでいます。


ブレーズ・パスカル

1パスカルは、1平方メートル (m2) の面積につき1ニュートン (N) の力が作用する圧力または応力と定義されている。大気が地表上に及ぼす圧力はほぼ0.1MPaに等しい。正確には温度0℃において760mmの高さの水銀柱がその底面に及ぼす圧力(760mmHg)を標準気圧(1atm)という。これは1013hPaに相当します。
他の単位との換算は以下のようになる。
○1 バール (bar) = 100000 Pa
○1 ミリバール (mbar) = 100 Pa = 1 ヘクトパスカル (hPa)
○1 気圧(標準大気圧)(atm) = 101325 Pa = 1013.25hPa = 101.325kPa = 0.101325MPa
○1 トル(水銀柱ミリメートル)(mmHg) = 133.322 Pa
○1 水銀柱インチ (inch Hg) = 3386.388 Pa

ボイラーなどに使う単位はPa(パスカル)の100万倍のメガパスカル(MPa)が主に用いられます。

※atmはアトムといいます。

圧力の単位がたくさん出てきましたが、混乱しないようにしっかり学習してください。

●圧力計
圧力計で圧力を測ると、そのときの大気圧との差が表れます。圧力計に表れる圧力をゲージ圧力といい、それに大気圧を加えたものを絶対圧力といいます 。
ゲージ圧力=絶対圧力-大気圧

●比体重・密度とは
蒸気の体積を表すのに、質量1kgの蒸気の占める体積(m3)を単位として用います。これを比体重(m3/kg)といいます。蒸気の圧力、温度に応じて定まります。ある量の蒸気の全体積を求めるには、蒸気の質量(kg)にその蒸気の条件に応じた比体重を掛ければいいです。比体重の逆数(体積1m3当たりの質量)を密度(kg/m3)といいます。

中学校で習ったことばかりですので、もう少し我慢してください。

ここから熱量、比熱の講議です。

●熱量とは
物体間を伝わる熱や、燃料や食品の持つ熱を、比較したり数値で測ることのできるもの(=量)として捉えたもの。単位はジュール(J)(栄養学関係ではカロリーも)が使われる。標準大気圧のもとで1kgの純水の温度を1℃上げるのに必要な熱量が1kcalです。

1J(ジュール)=0.2388cal

1kcal=4187J=4.187kJ

●比熱とは
1kgの物質を1度(k)上げるのに必要な熱量(KJ)をその物質の比熱という。水1kgの温度を1度上げるのに必要な熱量は4.187kjですから、水の比熱は4.187kJ/(kg・k)となります。

物質の中で比熱が一番大きいのは水です。比熱が大きいほど、温めにくく、冷めにくいことになります。

こんどは顕熱、潜熱、比エンタルピの講議です。

●顕熱、潜熱とは
物体に熱を加えると、その熱が物体の温度上昇に費やされる場合と、物体の状態変化に費やされる場合があります。前者の場合、加えた熱が物体の温度上昇によって内部に貯えられるものであり、このような熱量を顕熱といいます。後者の場合は、例えば水が蒸発するとき、加えた熱が蒸発のために使われて温度の変化は起りません。このような状態変化に用いられる熱を潜熱といいます。液体の蒸発のために使われる熱(潜熱)を蒸発熱といいます。標準大気圧での水の蒸発熱は、水1kgで2257kJです。

水1kg、蒸気等の全熱量を比エンタルピ(kJ/kg)といいます。

飽和水の比エンタルピは飽和水1kgの顕熱であり、飽和蒸気の比エンタルピは飽和水の顕熱に蒸発熱(潜熱)を加えた値です。

20℃の水の比エンタルピ=20×4.187≒84kJ/kg

標準大気圧の飽和蒸気(100℃)の比エンタルピ=100×4.187+2257≒2676kJ/kgとなります。

いよいよボイラ-に近づいてきました。
ここからは蒸気の講議です。

●水と蒸気の性質
水を加熱すると一定のところで沸騰がはじまります。そのあとは水温は上昇しなくなります。この温度を飽和温度(沸点)といい、飽和温度に達した水を飽和水といいます。標準大気圧では水の飽和温度は100℃です。圧力が高いほど飽和温度は高くなります。飽和温度(飽和水)に達するまでに加える熱をといいます。飽和水を過熱すると、熱はすべて飽和水の蒸発につかわれます。温度を変えずに、状態の変化(水蒸気になること)につかわれる熱を潜熱といいます。



圧力を上げて絶対圧力が22.06MPa(メガパスカル)に達すると、潜熱は0になります。この状態を臨界点といい、そのときの温度は374℃になります。

飽和水と同じ温度で発生する蒸気を飽和蒸気といい、通常は水分を含む湿り飽和蒸気といいます。

湿り飽和蒸気にさらに熱を加え、水分を含まなくなった蒸気を乾き飽和蒸気といいます。

乾き蒸気をさらに過熱すると、蒸気の温度が飽和温度(100℃)より上昇します。この蒸気を過熱蒸気といいます。

飽和蒸気と過熱蒸気の温度差を過熱度といいます。

水と蒸気の性質がよく分かったと思います。
次は伝熱についてです。

●伝熱について
伝熱(でんねつ)とは、熱エネルギーが、空間のある場所から別の場所に移動する現象。熱移動とも。伝熱は熱の移動現象を扱う工学であり、熱工学の一分野である。

もう少し分かりやすくいいますと、熱は温度の高い部分から低い部分に移動します。この現象をいいます。この伝熱には3つあります。

○熱伝導 ○熱伝達 ○熱放射(放射伝熱ともいいます)

熱の移動はこの3種類が組合わさって起きています。

●熱伝導とは
同じ物体の中で、温度の高いほうから低いほうに熱が伝わる現象

●熱伝達とは
流体が高温の固体壁に接触し、熱が伝わる現象

●熱放射とは
空間を隔てた物体間で熱が伝わる現象

●熱貫流と熱伝導について
高温の流体から固体の壁を通じて、反対側の低温の流体に熱が伝わる現象を熱貫流(熱通過)といい、熱貫流率で程度を表します。高温の固体の壁から接触している低温の流体に伝わることを熱伝達(対流伝熱)といい、熱伝達率で程度を表します。 熱貫流図基本知識はここまでです。しっかり理解したらレッスンに進んでください。


熱貫流図