ボイラーの水管理

ボイラーに用いられる水の学習からスタートです。
ボイラーを運転する上で重要なのが水の管理です。水が原因で起こる障害、事故の防止をするために、水質には基準が設けられています。さらに水質基準をクリアするために必要な水処理(補給水処理とボイラー系統内処理)、排水処理、水質試験、ボイラー水の吹出し管理等が含まれています。

○水の一般的性質
水は無色、無味、無臭の液体であり、化学記号はH2Oで表されます。水素原子2個と酸素原子1個から成り立ち、その分子量は18です。

LESSON48 ボイラー用水


ここではボイラー用水について学習します。

ボイラー給水として用いられるものは一般的に天然水(自然水)、水道水、復水、ボイラー用処理水があります。
▲天然水(自然水)

天然水は雨水、雪等が河川水、湖沼水、地下水(井戸水、湧き水)となった状態のものです。一般的に鉱物質の溶解量が少ないのですが、気体、有機物、懸濁物を含みます。季節や雨量によっても変化しますので、ボイラー用水としては注意し、十分管理する必要があります。
地下水は井戸の深さによって、水質が異なり、地域によっても水質に変化があります。雨水が地下に浸透するときは、地質、人為的な影響を受けるため、河川や湖沼水と比較して溶解物質が多いのが特長です。

※浅井戸はさまざまな塩類、懸濁物、有機物を多量に含む場合もあります。
▲水道水

水源は主に河川水(地表水)で、浄化処理(ろ過、沈殿など)、塩素で殺菌処理しており、飲料用が目的です。比較的不純物の含有量が少なく、低圧ボイラーでは、そのまま給水、使用できるものが多いです。ただスケールになる硬度成分を含んでいます。
工業用水道水は河川水を浄化処理したもので、飲料用水道水のように塩素殺菌処理は行なわれていません。
▲復水(ドレン)

ボイラーからの蒸気が配管や設備を経て凝縮され、ボイラーの給水設備に戻される水のことをいいます。蒸気が凝縮した復水(ドレン)は不純物をほとんど含みませんので、ボイラー水に適していますが、製造工程において不純物※が混入することがあります。

※不純物:配管の鉄分等が溶け込んでいることもあり、調べる必要があります。
▲ボイラー用処理水

原水※をボイラー外で給水用に処理した水で、軟化水、イオン交換水等があります。

※原水とは水道水、天然水、工業用水を指します。

次はLESSON49 水に関する用語と単位を学習します。

LESSON49 水に関する用語と単位


ここでは水の性質を表わす用語と単位を学習します。
▲pH(ピーエィチ、ペーハーと呼びます)

水(水溶液)が酸性か、アルカリ性かは水中の水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH−)の量で決まります。この性質を表示する方法として水素イオン指数pHが用いられます。25℃(常温)でpHが7未満は酸性、7は中性、7を超えるのはアルカリ性です。

pHと水の性質


▲硬度

硬度とは水に含まれる塩類の度合いをいい、20度以上が硬水、10度以下を軟水といいます。
硬度は下記のように3種類あります。

○カルシウム硬度
水中のカルシウムイオンの量を、それに対応する炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算し、試料1L(リットル)当たりのmg数(mg/L)で表わしたものです。
○マグネシウム硬度
水中のマグネシウムイオンの量を、それに対応する炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算し、試料1L(リットル)当たりのmg数(mg/L)で表わしたものです。
○全硬度
水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量を、それに対応する炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算し、試料1L(リットル)当たりのmg数(mg/L)で表わしたものです。

▲酸消費量

水中に含まれる水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等のアルカリ分を一定のpHまで中和するのに必要な酸に相当するアルカリの量を炭酸カルシウムの量に換算し、試料1L当たりのmg数(mg/L)で表わしたものです。
2種類の酸消費量があります。
○M-アルカリ度
試薬のメチルレッド(メチルオレンジともいう)が変色するpH4.8を中和点とするものです。
○P-アルカリ度
試薬のフェノールフタレインが変色するpH8.3を中和点とするものです。

▲mg/L

溶液の濃度を示す単位で、ボイラー水の水質試験によく使用され、1L中に含有する成分質量mgを示すものです。

次は水中の不純物を学習します。

LESSON50 水中の不純物


ここでは水中の不純物の種類とその障害について学習します。
▲不純物の種類

ボイラー運転の障害になる不純物には、溶存気体(ガス体)、硬度成分、全蒸発残留物、浮遊物等があります。

○溶存気体(ガス体)
水中には溶存気体といわれる酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、アンモニア(NH3)等があります。なかでも酸素、二酸化炭素は鋼材の腐食の原因となります。酸素は直接腐食作用をもっているほかに、他の物質との化学作用で、腐食を助長させます。二酸化炭素も酸素と同じように腐食作用を進行させます。

○全蒸発残留物
ボイラー水が蒸発して濃縮したときに、水中に残る固形物のことを全蒸発残留物といい、スケール、スラッジのことをいいます。これは腐食や伝熱管の過熱の原因となります。全蒸発残留物には、カルシウムとマグネシウムの化合物、シリカ化合物、ナトリウム化合物、懸濁物があります。全蒸発残留物は水中の溶解性蒸発残留物と懸濁物(泥、砂、有機微生物、水酸化鉄など)が混じったものです。
▲不純物による障害

水中の不純物はボイラーの運転にさまざまな障害を発生させます。ボイラー水中の溶解性蒸発残留物から生成して、管壁、ドラム等の伝熱面に固着するスケール、ドラム底部等に沈積する軟質の沈殿物スラッジ、ボイラー水中に繁濁している泥、砂等の懸濁物が主な障害となります。

○スケール
ボイラー給水中の溶解性蒸発残留物は運転中、次第に濃縮され、飽和状態となって析出し、スケールとなって伝熱面に付着します。これにより伝熱面を阻害し、熱損失を起こして、熱伝導率を著しく小さくするために過熱の原因となります。


○スラッジ(かまどろ)
スラッジとは軟質の沈殿物で、カルシウムやマグネシウムの炭酸塩素塩が過熱(80~100℃)により分解して生じた炭酸カルシウムや水酸化マグネシウム、ボイラー清浄剤を添加したときに生じるりん酸カルシウム、りん酸マグネシウム等があり、吹出しによって排出します。

○懸濁物
懸濁物には、りん酸カルシウム等の不溶物質、微細なじんあい、エマルジョン化された鉱物油等があり、キャリオーバの原因になります。

スケールの熱伝導率


●スケール、スラッジの障害
・熱の伝熱を妨げ、ボイラーの効率を低下させる。
・炉筒や水管等の伝熱面を過熱させる。
・水管の内面に付着すると水の循環を悪くする。
・スケール成分によって炉筒、水管、煙管等を腐食させる。
・ボイラーに連結する管やコック、その他の小穴を詰まらせる。
▲腐食

給水中には腐食の原因となる酸素、二酸化炭素等の溶存気体、水中のpHを下げる種々の化合物、溶解塩類、電気化学的作用等があります。腐食の形態によって全面腐食と局部腐食(孔食、グルービング等)の2種類に分けられます。
鉄がイオン化することによって生じる腐食は、特に濃度の高い水酸化ナトリウム(NaOH)と反応して腐食することをアルカリ腐食といいます。
▲キャリオーバ

蒸気中にボイラー水が混入すると、過熱器のスケール障害、タービンブレードへのスケール付着等の障害を発生させます。低圧ボイラーでもキャリオーバは配管のハンマリング、ボイラー水中のアルカリ成分による熱交換器の銅合金管の腐食等の障害を起こすことがあります。

次はボイラーに補給する水の処理について学習します。

LESSON51 補給水の処理


ボイラーに補給する水は、水質基準値に適合させるために処理したものを使用しなければなりません。補給水処理には凝集沈殿法、膜処理法、イオン交換法、ろ過等の方法があります。処理の目的に応じてこれらの方法を組み合わせることもあります。
▲懸濁物の除去

水中に溶けない物質を取り除く方法は自然沈降法、凝集沈殿法、ろ過等があります。コロイド状シリカ※、鉄分、その他の懸濁物の除去は一般にこの3つの除去方法を組み合わせて用いられています。

※コロイド状シリカとは1〜100nm(ナノメータ=10−6mm)のごく微細のシリカで、顕微鏡では認めるのがむずかしい。

○自然沈降法
水を滞留させて浮遊物を沈殿させる方法で、大きな池、大容量の水タンク等が用いられます。ろ過、凝集の前処理として、用いられることが多いようです。

○凝集沈殿法
自然沈降法、ろ過で除去できないものは凝集剤※を用いて、水に不溶解の海綿状浮遊物(フロッグ)をつくって、これに濁度成分を吸着結合、沈殿させ、分離タンクで分解除去します。分離できないものの一部はろ過器で除去します。

※凝集剤は一般に硫酸アルミニウム[硫酸ばん土、Al2(SO4)3]が用いられています。

○ろ過
ろ過器には緩速ろ過器と急速ろ過器があります。主に用いられるのは急速ろ過器で、開放型の重力式、密閉型の圧力式の2種類あります。ろ床材は砂、小石又は特殊の有機ろ床材(アンスラサイト)が用いられます。イオン交換処理装置、膜処理装置、軟化装置の前処理として用いられています。
▲溶解性蒸発残留物の除去

イオン交換法、膜処理法などで溶解性蒸発残留物を除去します。イオン交換法で処理水を作るのが一般的です。

○イオン交換法
不溶解性多孔質の固体自身がもつイオンを他のイオンと交換できる物質を、イオン交換体といいます。イオン交換樹脂の層に水を通過させて、水のもつイオンを樹脂に吸着させ、樹脂のもつイオンと交換させる方法をイオン交換法といいます。イオン交換法には単純軟化法、脱炭酸塩軟化法、イオン交換水製造法等があります。



〈単純軟化法〉
単純軟化法は給水中の硬度成分を単純軟化装置で除去する最も簡単な方法です。設備等のコストが安いため、低圧ボイラーに広く普及しています。

単純軟化水の処理


単純軟化法は強酸性陽イオン交換樹脂を充塡したNa塔に給水を通過させて、硬度成分(カルシウム、マグネシウム等)を樹脂に吸着させ、樹脂のナトリウムと置換させる方法です。この過程を軟化といいます。
処理された水の硬度は、はじめは0(ゼロ)に近いが樹脂の交換能力が落ちてくると、水に硬度成分が残るようになります。樹脂の交換能力が落ちた場合は、食塩水を使って、ナトリウムイオンを補い、イオン交換樹脂を再生させます。軟化装置の使用は残留硬度の貫通点※に達したら通水をやめ、再生操作を行ない、軟化装置の機能を維持することが大切です。

※貫流点(Break Through Point)とは、ここでは処理水の硬度が、単純軟化における処理水量がある一定の量に達すると急激に増加する点をいい、通常約1mgCaCO3/Lとされます。

単純軟化における処理水量と残留硬度の関係


再生操作のときは、食塩水による通薬、水洗いを十分に行ないます。流速が過少のときは再生効果が少なく、通薬の前の逆洗が過大のときは、樹脂が流出することがあります。
洗浄水には相当の塩化物イオンが含まれていますので、原水と同じくなるまで行ないます。樹脂は使用していくうちに、表面が鉄分で汚染され、交換能力が落ちますので、1年に1回は調査し、樹脂の洗浄(酸洗い)、補充を行ないます。

再生の工程




〈脱炭酸塩軟化法〉
酸消費量が高い原水は、軟化と同時に酸消費量も除去することが必要です。単純軟化でアルカリ腐食、復水系統の炭酸による腐食が著しいときはこの方式を用います。最近ではpHの調整難点があり、コストのかかる割には水質の改善があまりされないため、この方式は採用されなくなってきています。

〈イオン交換水製造法〉
高純度の給水を要求される高圧高温ボイラーは硬度成分のほかに、すべての残留塩類を除去しなければなりません。
イオン交換水製造法は使用する樹脂の種類と組み合わせにより、いろいろな方法がありますが、代表的な組み合わせは2床3塔式、混床式です。

〈膜処理法〉
膜処理法の逆浸透法がイオン交換法と同じように、原水中のイオンの除去に用いられます。溶媒(純粋な水)は自由に通しますが、溶質(カルシウム、マグネシウム等)は全く通さない半透明膜を用いて、その一方に溶液である原水を通して、逆浸透圧力以上の圧力を加えますと、他方に純粋な水だけが通るという原理を利用したものです。

次はLESSON52 ボイラー系統内処理を学習します。

LESSON52 ボイラー系統内処理


給水、ボイラー水の処理、復水の処理のことを一般にボイラー系統内処理といいます。腐食、スケールの付着、キャリオーバ等の障害、事故を防止するために、給水の脱気をしたり、脱酸素剤、pH調節剤、軟化剤、泡立ち防止剤等を給水、ボイラー水に添加します。ボイラー水の濃度管理は吹出し(ブロー)を行ないます。復水は防食剤の添加、復水中の不純物の除去をするために、ろ過、イオン交換処理、膜処理を単独または併用で行ないます。
▲溶存酸素の除去(脱気)

水中に溶解している気体(酸素、二酸化炭素等)のことを溶存気体といいます。脱気とは給水中の溶解している酸素、二酸化炭素を除去することをいいます。脱気の方法には、物理的脱気法(機械的脱気法)と化学的脱気法があります。

物理的脱気法には3つの方法があります。



○加熱脱気法
水を加熱して、酸素、二酸化炭素の溶存気体を除去する方法です。

○真空脱気法
水を真空雰囲気によって酸素、二酸化炭素を除去する方法です。

○膜脱気法
高分子気体透過膜で水中の溶存気体を除去する方法です。水中のシリコーン系、四塩化ふっ素系等の気体透過膜の片側に水を供給し。反対側を真空にして、水中の溶存酸素を等を除去します。
▲ボイラー清浄剤(清缶剤)

ボイラー水に直接添加する薬品で、スケールの付着、腐食、キャリオーバの障害を防止するために使用されます。酸消費量調節剤、軟化剤、脱酸素剤、泡立ち防止剤等が清浄剤(清缶剤)といわれる薬品です。
スケールの付着防止機能、ボイラー水のpH、酸消費量を調節する機能をもつ薬品です。主成分によってりん酸塩系、合成ポリマを使用した非りん酸塩系に分類され、作用によって下記のように分けられます。



○清浄剤の注入
ボイラー水を新しく張り込んだときに投入する基礎投入、補給水量に応じて投入する補助投入があります。

[基礎投入]
ボイラー清浄剤(清缶剤)は新しく張り込んだボイラー水に投入します。防食が主な目的で、多量の酸消費量調節剤を1回に投入する方法です。

[補助投入]
薬剤を水槽、補助タンクに投入したり、固形、粉末の清浄剤を水に溶解した液や液体清浄剤を注入装置を使って、ボイラー給水管、ボイラー胴に注入します。

▲ボイラー清浄剤の作用

○pH、酸消費量の調節
防食のため重要なのがpHと酸消費量です。薬剤による軟化作用に影響しますので、標準値を目標に調整することが重要です。
効果は下記の通りです。

・酸消費量を適度に保つことで、水中の鉄のイオン化を減少して、腐食作用を防ぎます。
・pHが大になると、ボイラー水中の硬度成分は溶解度が少なくなり、残留硬度も小さくなり、スケールの付着を防ぎます。
・低圧ボイラーではpHを障害のない程度に高くすると、ボイラー水中のシリカ(SiO2)を可溶性のメタけい酸ナトリウム(Na2SiO3)とすることができます。

酸消費量調節剤にはボイラー水に酸消費量を付与するもの、酸消費量の上昇を抑制するものの2つに分かれます。その中でも酸消費量付与剤は低圧ボイラーでは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムが用いられています。

○硬度成分の調節
ボイラー水中の硬度成分を不溶性のスラッジ(化合物)に変えることをいいます。硬度成分の調節をするために、ボイラー水中に添加する薬品を軟化剤といいます。軟化剤の使用量が多いときは、スケールのはく離、スラッジの多量生成が起こるので、ボイラー水の吹出しを適正に行ないます。
軟化剤には下記のものがあります。

[炭酸ナトリウム]
圧力1MPa以下の低圧ボイラーに使用されます。高圧ボイラーではボイラー内で分解して、無水炭酸を生成して悪影響を及ぼしますので、使用されません。
[りん酸ナトリウム]
優れた軟化剤で、広く使用されています。りん酸三ナトリウム、りん酸水素ナトリウム等があり、ボイラー水中でPO43−となってカルシウムと反応し、不溶性のりん酸塩になり、スラッジを生成します。吹出しにより、簡単に除去できます。

○スラッジの調節
ボイラー内で軟化して生じた沈殿物が伝熱面についてスケールにならないように、防止する必要があります。これの防止に使用されるのがスラッジ調整剤です。

○脱酸素
ボイラー水中の酸素をボイラー系統内処理によって除去することを脱酸素といいます。脱酸素を行なうために用いられる薬品を、脱酸素剤といいます。
脱酸素剤には下記のものがあります。

[タンニン]
溶存酸素の還元作用があり、脱酸素剤として用いられますが、低圧ボイラーのスラッジ調整にも用いられます。
[亜硫酸ナトリウム]
脱気後に給水中に含まれている溶存酸素の除去に用いられます。1mg/Lの溶存酸素の除去に7.88mg/Lの亜硫酸ナトリウムが必要ですが、余分に用いて反応を完全にし、余分に残るようにするのが一般的な用法です。
[ヒドラジン]
主に高圧ボイラーに使用され、反応生成物が窒素と水で、ボイラーの溶解性蒸気残留物濃度が上昇しない利点があります。溶存酸素1mg/Lの除去にヒドラジン1mg/Lが必要ですが、すばやく溶存酸素を除去するために100%過剰に注入します。過剰ヒドラジンはアンモニアと窒素に分解されますから、生成したアンモニアが復水中に多量に含まれると、銅系金属を腐食させます。

○給水、復水系統の防食剤
給水系統、復水系統は溶存酸素、二酸化炭素により腐食します。低圧ボイラーでは、給水の酸消費量(pH4.8)成分が熱分解し、二酸化炭素が発生し、これが蒸気・復水系統で凝縮水中に溶解してpHが低下します。これを防ぐためにpH調節剤、被膜性防食剤等が使用されています。

▲ボイラー水の濃度管理

○ボイラー水の吹出し(ブロー)
ボイラー水は徐々に蒸発していくと、全蒸発残留物の濃度が増し、キャリオーバ、スケール、スラッジを生じたりします。これを防ぐためにボイラー水の一部の入れ替えや、不純物の濃度を下げたりしなければなりません。この操作をボイラー水の吹き出しといいます。

○吹出しの方法
吹出しの方法は間欠吹き出しと連続吹出し、ボイラー水を全部排出する全吹出しがあります。

[間欠吹出し(間欠ブロー)]
ボイラー水の一部を最下部から間欠的に排出することを間欠吹出しといいます。ボイラー水の濃度を下げたり、ボイラー底部にたまった軟質のスラッジを排出するために行ないます。
[連続吹出し(連続ブロー)]
胴内の吹出し内管から、ボイラー水を導いて吹出し、調節弁、熱交換器、フラッシュタンク等からなり、ボイラー水質測定器等と連結し、水質の調節も行なわれます。この方法で必要最小量の吹出しが連続的に行なわれ、かつ、吹出したボイラー水の熱量は大部分回収されますから、ボイラーの運転がスムーズに行なわれます。急激な吹出しによるボイラーに与える影響や熱損失を少なくする長所があります。

▲吹出し量

1日の使用時間、使用条件、給水の性状により、ボイラーの濃度を下げるために行なう間欠吹出し量と回数は違ってきます。ボイラー水の水質測定、その制限値(標準値)を参考に決定します。1日1回の吹出しは最低限行なうようにします。沈殿物を除去する場合は、運転開始前か、運転中は蒸気発生量の低いときに吹出しを行ないます。

これで「ボイラーの取扱い」の学習はすべて終了しました。つぎは燃料と燃焼について学習します。
LESSON53 燃料概論からスタートです。