燃焼室と通風

LESSON63 燃焼室

ここでは燃焼室の条件、具備すべき要件、構造、熱負荷、燃焼温度など、さまざまなことを学習します。

▲燃焼室の条件

燃料を効率的に燃焼させるためには、下記のようなことが大切です。
・燃焼室を高温に保つ
・燃料を速やかに着火させる
・燃料と燃焼用空気はよく混合させる
・燃焼速度を速めて、燃焼室内で完全燃焼させる

[燃焼室の要件]
・燃焼室の形状は、使用燃料の種類、燃焼装置の種類、燃焼方法などに適合していること
・燃焼室の大きさは、燃料、特に発生した可燃物の完全燃焼を完結させるのに必要なものであること
・着火がしやすい構造であること、バーナタイル、着火アーチなど必要な場合は設ける
・燃料と空気との混合が有効、かつ急速に行われる構造であること、燃料と空気の相対速度を適性にすると、狭い燃焼室でも短時間に完全燃焼が可能
・燃焼室の耐火材は、燃焼温度に長期間耐え、焼損、スラグの溶着などの障害を起こさないもの
・炉壁は熱損失の少ない構造であること
・空気、燃焼ガスの漏入、漏出がないもの
・炉は強度が十分であること

[油だき燃焼室の要件]
油だき燃焼室は前に記した要件の他に下記の要件を具備しなければいけません。
・使用バーナは燃焼室の形状、大きさに適合したものであること、適合しないバーナは焼損や不完全燃焼の原因になります
・燃焼室の大きさは、燃料が完全燃焼できるものであること、燃焼ガスの炉内滞留時間を燃焼完結時間より長くすることが必要です
・燃焼室温度を適当に保つ構造であること、燃焼室温度が低すぎると不完全燃焼となり、高すぎると炉壁などを焼損し、高温障害を起こします

[火格子燃焼室の要件]
火格子燃料室は前に記した要件の他に、下記の要件を具備しなければなりません。
・火格子の間隔は燃料の種類に合ったものであること
・燃料室の高さは、発生可燃ガスが完全燃焼するために必要なものであること
・火格子面積は燃料使用量に応じた十分な広さであること

▲燃料室炉壁の構造

炉壁の種類には水冷壁、れんが壁、不定形耐火壁などがあります。水管ボイラー、炉筒煙管ボイラーの燃焼室のほとんどはボイラー水で冷却されており、れんが壁や不定形耐火壁は、バーナタイル部、燃焼室のコーナ部の一部に使用されています。

○炉壁の種類

※ベーレー式水冷壁とは水冷壁管を耐火物で覆ったもの
※メンブレンウォールとは水冷壁管を耐火壁の表面に縦向きに取り付けたもの

▲燃焼室熱負荷と燃焼温度

燃焼室の燃焼性能を知るには、燃焼室熱負荷、火格子燃焼率を知ることです。

○燃焼室熱負荷
単位時間での燃焼室の単位容積あたりの発生熱量をいいます。



○燃焼温度
炉内で燃料を燃焼させるとき、どの程度の温度まで到達するかは条件によって変化します。高温になるときは、1800℃になる場合もあります。
・燃料の種類・空気比・燃焼効率・火災からの放射・炉壁、伝熱面への伝熱・燃焼用空気の温度などの条件があります。

○理論燃焼温度
0℃の燃料が0℃の理論空気量で完全燃焼し、外部への熱損出がないことを仮定したとき、到達すると考えられる燃焼ガス温度を、理論燃焼温度といいます。

○実際燃焼温度
燃焼室で燃焼する場合は、燃焼温度のところで述べたように、さまざまな条件によって理論燃焼温度より低くなります。

▲一次空気と二次空気

一次空気は燃料のまわりに供給され、初めの燃焼を安定させます。残りの空気は二次空気として、燃焼室に送られ、燃料と空気の混合を良い状態にして、完全に近い燃焼をめざします。

▲燃焼についての基礎事項

○理論空気量
理論空気量とは、燃焼に必要な最少の空気量のことをいいます。単位は液体、固体燃料では1kg当たりのm3Nで、m3N/kgで表します。m3Nとは標準状態における空気の体積です。気体燃料の場合は、体積1kg当たりのm3Nで、m3N/m3Nで表します。

○実際空気量
実際空気量とは、実際の燃焼に際して送入される空気量をいいます。

○空気比
空気比とは、理論空気比に対する実際空気量の比をいいます。
理論空気をA0、実際空気量A、空気比をmとするとき、A=mA0という関係が成り立ちます。
固体・液体・気体燃料の実際燃料におけるmの概略値は下記の表のとうりです。



実際燃焼におけるmの概略値

○燃焼ガスの成分
燃焼ガスの成分は下記の通りです。燃焼ガスの成分割合は、燃料の成分、燃焼の方法、空気比の要因によって変わります。
・CO、CO2、H2O、SOx、NOx(燃焼反応による酸化物)
・水分、湿分(H2O)
・空気中のN2、燃焼中の窒素
・過剰空気(H2O)

燃料の成分、燃焼の方法、空気比により、燃焼ガスの成分割合は変化します。

○ボイラーの熱損失
ボイラーの熱損失の原因にはいろいろありますが、排ガスによるものがいちばん大きいといわれています。
・不完全燃焼ガスによる損失
・排ガス熱による損失
・ボイラー周壁からの放熱による損失
・燃えがら中の未燃分による損失

ボイラー効率が低下しないように下記のことを行います。
・少ない過剰空気で完全燃焼させる
・ボイラー内外の伝熱面の清掃などを行い、熱吸収をよくし、燃焼ガス熱の回収をできるだけする

最適な状態で燃料の熱を多く発生させ、燃焼ガスの熱を有効に利用することで、大幅に燃料コストを節約することができます。

LESSON64 通風

ここでは燃料の燃焼に大切な通風について学習します。

燃料を燃焼させるには、常に適量の空気を送り込むことが必要です。燃焼ガスはボイラー、エコノマイザ、加熱器などの伝熱面に接触しながら流れます。その後、燃焼ガスは大気に放出されます。これらのことがスムーズに行われるには、空気の流れをつくり、新しい空気を炉に送り、燃焼ガスを外に排出することを、たえず行うことが大切です。

炉、煙道を通して起こる空気、燃焼ガスの流れを通風と言います。通風の単位はPa又はkPa(Paの1000倍)が一般に用いられます。

▲通風方式

通風方式には、煙突だけによる自然通風と機械を用いた人工通風があります。それぞれの特徴は下記のようになります。

○自然通風
自然通風は煙突によって生じる通風で、煙突内の排ガスと大気の密度の差によって生じる対流を利用するものですえ。煙突が高いほど排ガスと大気の密度差が大きく、自然通風力が大きくなります。主に小容量ボイラーに利用されています。
ボイラーの煙突は雨水の浸入によって、ボイラーが損傷することがありますので、それを防止する構造でなければなりません。

○人工通風
人工通風は通風機(ファン、送風機)を使用して、通風力を生じさせるもので、大容量ボイラーから小容量ボイラーまで広く利用されています。
押込通風、誘引通風、平衡通風の3種類があります。

押込通風
押込通風とは、ファンを用いて、燃焼に必要な空気を強制的に送り込ことです。大気圧より高い圧力で押し込むので、加熱燃焼方式ともいいます。ボイラーのほとんどはこの方式を採用しています。
[押込通風方式の特徴]
・炉内に漏れこむ空気がないため、ボイラー効率が向上します
・炉内を流れる空気流と燃料の混合が有効に利用できるので、燃焼効率が高まります
・気密が不十分のとき、燃焼ガスやばい煙が外に漏れる

誘引通風
誘引通風とは、ファンを用いて燃焼ガスを誘引するもので、煙道又は煙突入口に設けたファンによって燃焼ガスを
吸い出し、煙突に放出します。
[誘引通風の特徴]
・燃焼ガスの外への漏れがありません
・誘引ファンは高温かつ体積の大きなガスを使用するので、大型ファンを必要とし、所要動力が大きい
・燃焼ガス中(石炭、重油など)には、スス、ダスト、腐食性物質を含むことが多く、ガス温度も高いので、誘引ファンは磨耗、腐食が発生しやすい

平衡通風
押込ファンと誘引ファンを併用したものが平衡通風方式です。炉内圧は大気圧より少し低く調節します。
[平衡通風の特徴]
・燃焼調節が容易である
・燃焼ガスの外部への漏れがありません
・通風抵抗の大きいボイラーでも、強い通風力が得られます
・押込通風より大きな動力が必要です

▲ファン(通風機)

一般のボイラーではファン(通風機)を使った人工通風が用いられています。小容量ボイラーでは一部で自然通風を用いられているのもあります。
ファンは、通風方式に応じ、適切な風量、風圧のものを選ばなければなりません。ファンの素材は腐食、磨耗に強いものを選択します。ファンには多翼型、ターボ型、プレート型と主に3つの種類があります。それぞれの特徴は下記のようになります。
[多翼形の特徴]

・小形、軽量、安価である
・羽の形状がぜい弱で、高温、高圧、高速には向いていません
・効率が低く、大きな動力が必要です
・風圧は0.15~2kPaで比較的低いです
[ターボ形の特徴]

・効率が良く、小さな動力で良い
・形状が大きく、高価である
・高温、高圧、大容量のものに適しています
・風圧は比較的高く、2~8kPaです
[プレート形の特徴]

・強度があり、腐食、磨耗に強い
・大形で、重量が大きく、設備費が高い
・形状がシンプルで、プレートの交換が簡単である
・風圧は0.5~5kPaです

▲ダンパ

ダンパの役割は通風力の調整、ガスの流れの遮断、煙道にバイパスがある場合にガスの流れの切り替えなどがあります。ダンパには回転式ダンパと昇降式ダンパの2種類あります。

○回転式ダンパ
広く一般的に用いられているもので、ダンパ板の中央、または一端に回転軸を設けて、開度を調節するものです。

○昇降式ダンパ
レンガ済み煙道などによく用いられるもので、ダンパ板の昇降で開度を調節するものです。